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街の中心にある"SCという場所"を活かして、社会と共有する価値を創り出していく。

東神開発株式会社 代表取締役 取締役社長

倉本 真祐

立地創造から始まる、東神開発の基本戦略

私たち東神開発は、1969年、田園風景が広がる玉川の地に、日本初の本格的郊外型ショッピングセンター(SC)として、玉川高島屋S・Cをオープンしました。もともと商業立地ではない場所に、将来のモータリゼーションを見据え、街づくりの起点となる地域に開かれた大型商業施設を造ることで、街の持続的な成長と発展をリードしてきました。SCという言葉自体が一般的ではなかった当時においては極めて先進的試みであり、私たちは、こうした立地創造から始まる商業施設開発を基本戦略とし、長期的な視点で事業に取り組んできました。

環境変化と、これからのSCに必要なこと

私たちは今、マクロ環境の大きな変化に直面しています。世界中で気候変動や地球環境保全といった人類共通の課題に真摯に向き合うことが強く意識されており、商品やブランドを選択する判断基準における「エシカルな視点」は今後益々強くなると思っています。企業の理念やブランドの活動に共感できればファンとして商品を購入し、逆に共感できなければ商品がどんなに良くても選ばない、その傾向は若年層ほど強くなっています。

加えて、EC拡大による販売チャネルの多様化があります。多くの商品がネット通販で購入できるようになり、リアルな店舗を利用する必然性はますます希薄化しています。消費者の消費行動の変化により、リアル店舗の在り様も変わっていく必要に迫られているのです。SCにはこれまでの概念「ショッピングする場」から"モノを買う以外の目的"、すなわち『いかに施設の場所性を最大化して、時間的・空間的な価値を生み出していくのか』が問われ始めています。

そのような認識のもとに、これから私たちが次世代型のSCを考えていく上でのキーワードとなるのは、"コミュニティ"と"サスティナビリティ"であると思っています。そこに行けば、誰かと時間や空間を共有できる、あるいは、エコロジーを体験・体感できる、そうした場を提供し、そこを起点にメッセージを発信していくことが、お客様の共感を得る上で極めて重要になると考えています。

経営課題としてのSDGs

SDGsに取り組むことは当社のみならず企業や行政組織などあらゆる組織にとって極めて今日的な経営課題であると考えなくてはならないと思います。

私たちにとってSDGsの取り組みは、重要な経営課題の一つですが、従来から言われているCSRとは発想が大きく異なります。SDGsには単なる社会貢献活動としてではなく、ビジネスに変革をもたらし、かつ継続性を担保する契機として取り組まなければなりません。お客様の共感・支持を獲得できるか、集客に寄与するか、また、ご出店者様への支援につながるか、そして全体の効率化につながるかなど、事業戦略上の視点からビジネスに結びつけることが不可欠です。

加えて、企業姿勢に対する共感がキーワードとなる現代社会においては、SDGsへの取り組みを企業活動の中核の一つとすることが、企業にとってのブランディング、すなわち企業価値の向上にも結び付いていくのです。

SDGsの領域は極めて広く、大きな取り組み課題が多いため、自分たちの資質や資産を活かせる領域にフォーカスすることが肝要です。 私たちが商業ディベロッパーとしての資質と固有性を活かすには、やはり、"街の中心に位置する大型施設"という自らのアドバンテージを最大化することが必須であると思います。 "SCという場所"を活かしてSDGsに取り組んでいくことはある種の必然であり、我々の使命だと思っています。「これからのリアルな場としてのSCが、地域の生活インフラとして社会と共有できる価値を生み出すことで、お客様からの"共感"を獲得していく」これが当社のSDGsの位置づけです。

それらを踏まえて当社では、「場所性を顕在化・活性化するスマートコミュニティ」というテーマで、社会と共有する価値を生み出すことを目指して次の3つのテーマに取り組みます。まず、「クリーン&グリーンな人間活動環境の実現」です。SCを再生可能エネルギーの先導的消費環境と位置付け、2050年までに100%再生可能エネルギーへの転換を目指すとともにグリーンインフラ整備を積極的に進め、SC全体を地球環境保全に向けたメッセージの発信源としていきます。

次に、「ユニバーサル化・ストレスフリー化&エコ社会化の推進」です。街の中心に広大な面積を有するSCを有事の際の拠り所とし、災害対応や帰宅困難者の受け入れ、避難場所の提供など、地域の安全・安心拠点としての機能を備えていきます。また、「SC版MaaS」のような街とSCのシームレスモビリティ実現を目指すなど、スマートコミュニティの核として、地域の共同インフラ、共同サービスの構築を目指します。

3つ目は「ロス低減によるサスティナビリティ獲得」です。"ゼロエミッション(廃棄物ゼロ)""食品ロスの抑止""廃プラの再利用"などの課題に対し、お客様、テナント、ディベロッパーが一体となって、SCを循環型社会の実現に向けたターミナルとして機能させていきます。

これからの10年は、今まで以上に変化のスピードが加速していくことでしょう。SDGsゴールの中間地点2030年までに10年弱、ゴールの2050年までには約30年ありますが、10年後の社会の在り様を正確に推測することは困難です。但し、明確に言えることは、未来は今とは異なる世界であり、新たな社会であるという事です。しかも、これからの10年は変化の幅が更に大きくなってくると思っています。そこから言えるのは、我々も常に変化し、進化し続けなければならないという事です。これからの企業に求められる最も重要な資質は「変化への対応力」であると言っても過言ではありません。

今から約50年前、玉川高島屋S・Cを創り上げた私たちの先人は、館を商品陳列に適した閉じた箱にするのではなく、"街に向かって開かれたSCを創る"という思想で開発を進めてきました。それが地域に密着した環境型SCというイメージの形成に寄与し、これほど緑豊かな施設を生み出すことにつながったのです。こうした基本戦略は、私たちのSDGsに対する取り組みとも通底しており、その意志を受け継ぎ、強い決意で臨んでいきたいと思います。

SCからSDGsの輪を広げていく

SCは将来的に"CC"、すなわち、コミュニティセンターへ進化していくと考えています。その場所に行けば仲間がいて誰かと触れ合える、何かが体験・体感でき時間や空間を共有できる、そうした場と機会を創り、そしてショッピングもしていただく。つまり、ショッピング以外の目的をいかに創出できるかが問われているのです。足を運ぶ理由や目的を創り出す上でSDGsの視点は必須であり、これからの現代社会においてはあらゆる企業活動の前提になるとさえ言えます。 SDGsは一朝一夕に結果が出るものではありません。継続していくことが最も大切であり、私たちは皆、SDGsという共通の目標に向かって進む、いわば同じ船に乗る運命共同体です。SCという場所を最大限に活かしながら、SDGsに対する取り組みをさまざまなかたちで具現化し、その輪を大きく広げていくことが必要です。そのために、SCを今一度、社会に向けて開かれた場所として変革していくことが、商業ディベロッパーである私たちに課せられた役割であり、使命と考えています。

私たちは未来に向かって、地域のお客様、ご出店者の皆様やパートナー企業の皆様など、すべてのステークホルダーの方々と共にサステナブルな街づくりに取り組んでいきたいと思っています。