東神開発㈱ 本社オフィスリニューアル - 創業の地で受け継ぐ「コミュニケーションオフィス」-

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二子玉川の地で創業してから60年を超えた東神開発。2025年秋、社員の働きやすさと創造性を最大化し、企業理念「Make the “Mind Symbol”」をオフィス空間でも体現することを目指して、本社オフィスの全面リニューアルを実施しました。

今回は、リニューアルプロジェクトに携わったメンバーの話をもとに、新オフィスへの想いやこだわり、空間づくりの裏側なども交え、新オフィスの魅力をお届けします。

オフィスプロジェクト事務局 久保田成樹さん(左)/ 坂﨑千南さん(右) 事務局として、全体コンセプトの立案、ICTツールの導入・運用の仕組み構築、オフィス設計・空間デザイン、内装工事までの全体統括を行う。

リニューアルプロジェクトのはじまり

はじまりは7年前の2019年。「オフィス変革プロジェクト」の名の下、部署も年代も異なる約5名のメンバーが集まりました。社員一人ひとりがいきいきと働き、イノベーションを生み出すことができる場づくりを目指し、プロジェクトは始動しました。

[久保田]
2019年当時から、オフィスリニューアルを単純な改装ではなく、会社が抱える「働き方」や「コミュニケーション」の課題解決を図る機会として捉えて、検討を進めていました。理想のオフィス環境をテーマにワークショップを開催した際には、数多くの社員に参加してもらい、闊達な意見交換を通じて、具体的な課題を明らかにすることができました。他にも、全社社員を対象としたアンケートを実施し、当時のオフィスへの不満や新しいオフィスに期待すること、重要視することなどを募りました。

検討段階から時間をかけて社員を巻きこむことで、リニューアルへの関心度も高まり、会社の課題自体も自分事化できていったと思います。

予約不要で利用できる打ち合わせブースは、「小規模のミーティングを気軽に開催したい」という社員の声から実現したもの

コロナ禍を経て変化したプラン

プロジェクト発足の翌年、2020年に猛威を振るったコロナウイルス。我々の生活様式も変わり、当たり前が当たり前ではなくなる中、オフィスの計画も変化していったそうです。

[久保田]
実は、プロジェクトがスタートした時点では、2023年にはリニューアルが完了する予定でした。2020年のコロナウイルスのパンデミックにより、進行していた計画を変更・延期せざるを得ませんでしたが、当時はまだメジャーではなかったWEB会議の増加や在宅勤務の導入など、劇的に変化する「働き方」に対し、柔軟に計画が調整できたことはひとつのプラスに働いたと考えています。

コロナ禍で増加した「WEB会議」に対応するブースを複数設置

コンセプトは「みんなでつくるコミュニケーションオフィス」

本社オフィスが持つ最大の特徴は、建物内部に柱が一切ない「大無柱空間」。この空間を生かした空間設計と環境デザインが進められました。

[坂﨑]
ワンフロアで見通しがよく、オープンな雰囲気に満ちているこの空間の特徴を生かしたいと考えました。目線を遮るキャビネットや間仕切りは最低限にし、フロアの全員の顔が見渡せるような環境を目指しました。また、各階に設けたリフレッシュスペースや集合した個人ロッカー、備品やコピー機を1か所に集約したユーティリティエリアなど、部署の垣根を越えた偶然の出会いや対話が自然と生まれる空間設計となっています。誰とでも気軽にコミュニケーションが生まれる環境が、社員同士の交流を促し、そこから新しい発想やプロジェクトの種が生まれると信じています。

2フロアそれぞれに設けられたリフレッシュスペース。休憩のほか、作業やミーティングでも利用できる

リフレッシュスペースを彩る、社員の個性

検討段階から、社員を巻き込むことを意識しながら進められたプロジェクト。オフィスの完成の2週間前にも、参加型の取り組みが行われていました。

[坂﨑]
社内のコミュニケーションを生み、”みんなでつくる”仕掛けのひとつとして、「リフレッシュスペース」の天井から吊り下げるプランターを、社員のみなさんがペイントするイベントを開催しました。オフィスが完成する直前、屋上に十数名が集まり、無地のプランターに思い思いの色で、自由な模様を描いてもらいました。「あれは自分がつくったんだ」と思えるものがオフィスの中にあることで、オフィス自体が「自分の居場所」になり、安心して過ごせる空間になればと思っています。

ペイントイベントの様子
同じものはひとつもないプランターは、様々な個性を持った社員が集まるオフィスを表しているよう

“自分の居場所”が選べる多様なスペース

在宅勤務やリモートワークが一般化する中、東神開発の新オフィスは社員全員分の自席を確保。さらに多様なワークスペース、予約不要の打ち合わせスペースや自由に使えるフリー席など、人数以上の執務スペースを用意しました。

[久保田]
わたしたち東神開発が持つ最大の資質は、ショッピングセンターという「リアルな場所」を持っていることです。この“リアル”を大切にする姿勢は、自分たちの働くオフィス環境にも通ずるものだと考えました。

プロジェクトが進む中でコロナ禍に見舞われ、在宅勤務やリモートワークも働き方の選択肢として増えました。オフィスを縮小する企業も増える中、「東神開発のオフィス環境で重視すべき価値は何か」という点に今一度立ち返った結果、“リアルな”オフィス環境に多様性と柔軟性をもたせ、生まれ変わらせることにこだわることにしました。
このオフィスでは、社員がその日の気分や業務内容に応じて“自分の居場所”を選択できることが大きな魅力です。「帰ってこられる場所がある」「オフィスの中に自分の居場所がある」という安心感が、社員の挑戦やクリエイティビティの後押しになると考えています。

自席以外にも使えるフリーな座席。+αのスペースによって、社員が”自分の居場所”を選べる環境を実現した

二子玉川の“まちの記憶”を継承する

本社オフィスがある東館は築56年。周辺に新しいオフィスビルも建つ中、決して新しいとは言えないこの建物をリニューアルし、使い継ぐことに決めました。

[久保田]
本社を移転する案も一時検討されましたが、創業の地・二子玉川への愛着と、地域と共に歩んできた歴史を大切にしたいという想いから、あえて同じ場所でのリニューアルを選択しました。5階・6階のエントランスからは、玉川髙島屋S.C.はもちろん、二子玉川の街並みを一望できます。この街と共に歩んできた時間、その記憶をこれからも大切にしたい。だからこそ、本社オフィスも当社の“マインドシンボル”の一部として進化させたかったのです。

以前よりも大きくなった窓からは、二子玉川の街とSCが一望できる

帰ってきたケヤキの木

オフィスの中には、そんな「想いの継承」を象徴するように、あるものが設置されました。

[坂﨑]
実は、各エントランスに置かれたテーブルと、会議室の名称を示した木のプレートに使用されている木材は、かつて南館の正面入口前にあった樹齢約50年のケヤキの木です。その後、木の成長に合わせてSC内のカフェのテラスに移植されたのですが、内部の腐食が見つかり、倒木の危険もあったことから、2021年にやむなく伐採しました。しかし、そのまま処分するにはあまりにも立派な木だったこと、その木が蓄えてきた玉川の歴史とともに、次の世代に受け継いでいく形を検討した結果、処分せずに木材に加工し、今回のオフィスリニューアルに合わせてまたここに生まれ変わって戻ってきてもらいました。

これまでのSCの成長を見守ってきたケヤキの木が残るテーブルや会議室で、これからの二子玉川を語っていくような、そんな機運が社員の中に芽生えるといいなと思っています。

約50年の歴史が詰まったテーブルが、訪れる人を出迎える
ケヤキの木の”こぶ”から生まれたサイドテーブルは5Fのエントランスに

会議室の名称を記した、木のぬくもりを感じるプレート


今後の展望と“生きたオフィス”づくりへの想い

新しいオフィスは完成を迎えましたが、プロジェクトメンバーはこれからのオフィスの姿も見据えていました。

[坂﨑]
5年後、10年後、会社は今のままの姿ではないと思います。その変化する組織の姿に合わせて、オフィスのあり方も柔軟に変えていけるように、あえて余白を残した空間設計にしています。例えば、壁を多く設けず、必要最小限のキャビネットで空間を区切っているのも、そのひとつです。コンセプトである「みんなでつくるコミュニケーションオフィス」には、社員のみんなが、このオフィスを“自分たちの“居場所として、”自分たちで”つくっていってほしいという想いも込めています。

[久保田]
新オフィスは「完成して終わり」ではなく、時代や働き方の変化に合わせて進化し続ける“生きたオフィス”です。一度形にはなりましたが、肝心なのは今後の運用だと考えています。これは、我々が手掛ける商業施設の開発・運営とも通ずるところがあると思います。社員一人ひとりが、安心安全な場所で、自分らしく働ける。そんな職場環境と仕組みづくりをこれからも追求していきます。

 東神開発は、オフィスという“リアルな場所”から、社員・地域・時代と共に成長し続ける企業を目指してまいります。今後のさらなる進化にご期待ください。

▶リニューアルを記念し、オフィス全体をドローンで撮影しました。こちらもぜひご覧ください。