special talk流山おおたかの森 
開発ストーリー

先々まで街が成長していくために必要なことを継続して考える

流山おおたかの森S・Cについて

2022年に、全国の市町村の中で「人口増加率6年連続日本一」となった千葉県流山市。その原動力のひとつと言えるのが、流山おおたかの森S・Cです。流山市のほぼ中央に位置し、東武アーバンパークラインとつくばエクスプレスが交差するターミナル駅「流山おおたかの森駅」。この駅に隣接する形で2005年から始まった流山おおたかの森エリア開発は、17年の月日を経て2022年6月に一連の開発計画が完了しました。引き続き街の魅力を高める活動や開発に取り組んでいきます。

このページでは、そんな流山おおたかの森エリアにおけるこれまでの開発エピソードを通じて、街づくりを仕事にする魅力をお伝えいたします。

開発当初を振り返って

吉田:
まず、2005年3月にコンペで事業決定したことが、流山おおたかの森エリアの開発の始まりです。東武野田線(現:東武アーバンパークライン)とつくばエクスプレスが交差する場所に新駅ができることになり、それに伴って区画整理事業として周辺が更地となりました。

当時はまだ何も建っていないまっさらな空き地だった場所が、商業開発のエリアに指定されたのです。 コンペは、開発全体の具体的な計画と入札金額で、総合的に評価いただいて獲得することができました。

とはいえまだ駅もなにもない状態ですから、2005年8月につくばエクスプレスが開通するまでの間は、現地の確認に二子玉川の本社から社用車で向かう日々でした。現社長が当時のプロジェクトリーダーだったので、何度も同行させていただきましたね。

全国的に見ても、新駅ができるタイミングでゼロからの開発に携われる機会はそうそうありませんし、東武アーバンパークラインの2駅隣には当社が運営している柏髙島屋ステーションモールもありました。なにより、玉川髙島屋S・Cの実績でテナント様からも一定の評価や注目をいただいていた背景もあり、社内の各部署から多くの人材が集められて開発がスタートしたのです。

稲葉:
柏のステーションモールとはお客様の層も違いますから、リーシング(※1)の面でも棲み分けができていましたね。流山おおたかの森S・Cの集客ターゲットは小さいお子様がいるファミリー層。お買い物だけが目的ではなく、SCやその周囲に滞在すること自体を楽しんでいただける開発を目標に掲げたんですよね。

(注釈)
リーシングとは、商業用不動産の賃貸を支援する全般の業務のこと。テナントの入居・仲介だけでなく、入居を検討するテナントの業態に合うか・合わないかの周辺調査や、同業のテナントが隣接しないよう、施設内のテナント構成を検討するなど、その業務は多岐に渡ります。

吉田:
そうですね。当時の郊外型ショッピング施設は、様々なテナントが入る大きな施設を箱のように作って、その周囲を駐車場で囲む…という作り方が一般的でした。施設の中と外が明確に区切られる形です。流山おおたかの森S・Cは駅に隣接していることもあって、駅前広場など車が入れない区域がかなりありました。

だからこそ「歩いていて心地いい空間」であったり、「特定のお店だけでなく、SCに行くことを目的」にすることが、当初からの計画だったのです。

澤田:
今の流山おおたかの森S・Cやその周辺を見ると、その計画は実現したと言えるんじゃないでしょうか?

吉田:
それは「こかげテラス」の開業が実現したことが大きく影響しています。

小見山:
つくばエクスプレスの高架下に開発した商業施設ですね。

吉田:
そうです。流山おおたかの森S・Cの本館は駅の南口にあって、南口と西口の間の高架下に賑わいとなる商業施設が、こかげテラス。あれができていなければ、南口と西口が分断されて、今のような人の回遊が生まれない街になってしまったと思います。

稲葉:
西口は様々な事情があって開発が遅れたんですよね。南口の開発が進んでも西口を歩く人は少ないままでした。でもその後にアゼリアテラスや他デベロッパーが手がけた大規模なマンションが完成したことで、西口にも多くの人の姿を見るようになりました。

吉田:
初めは南口で、少しタイムラグがあったけど西口も開発が進んで。その両方に自由にアクセスできるようになったのは、こかげテラスが完成し機能したからこそ。開発計画全体を見返しても大きな転換点だったと思います。

稲葉:
確かにそうですね。当初から見立てていた計画が、目に見えて形になってきたと実感できるようになったのもこかげテラスが完成してからでした。人気テナントの中には、ファミリー層だけでなく学生に人気のお店もあって、行き交う人たちの多様性が増したように思います。

澤田:
晴れた日に、南口の広場に座って飲食する人が当たり前に定着したのも、この頃からだったように思います。

稲葉:
もともと大きなマンションもあって人はいたんだけど、以前は寄り道をする場所がなかったから、あまり行き交う人を見かけませんでした。ところが開発が進むうちに「寄り道する場所」が増えて、前から近隣に住んでいた方々にもご利用いただけるようになって、それが新たに住む方々を増やすきっかけになったと言えるでしょう。

澤田:
こかげテラスの開業日には流山の市長もテープカットにいらっしゃるなど、行政にも注目をいただいていましたよね。そういった意味でも大きなターニングポイントだったんですね。

小見山:
こかげテラス以降のフェーズを建築の観点で見ると、FLAPS・南口広場再開発・ペデストリアンデッキの建設も規模が大きくて印象的でした。行政やつくばエクスプレス(運営会社:首都圏新都市鉄道)とのやりとりも多くなりましたし、この3つが完成したことでより多くの人が集まり賑わいが生まれ、その後の開発もスムーズに進みました。

澤田:
確かにそうですね。こかげテラス以降の開発フェーズでは、FLAPSとANNEX2、アゼリアテラスの3施設がほぼ同時に進行していたと思います。

開発を進める中で大変だったこと

吉田:
FLAPSやアゼリアテラスなどの開発を進めている段階で、買い物がメインの商業施設だけでなく、別の目的でも人が集まるような街づくりを検討するようになっていきました。街としての機能を増やした方がより魅力的になるという考えです。

着手している開発案件を進めながら、空いている場所にどんな施設を作り、どういう街にしていくか?というのを約1年かけて検討を重ねました。アゼリアの上部をオフィス棟にしたのも「多様性を持つ街づくり」の一環でしたね。

稲葉:
リーシングの面で言うと、コロナ禍の影響でFLAPSの飲食店舗は入居が決まっていた6区画中4区画でキャンセルが出たり、お客様の行動様式も変わって居酒屋などのアルコール業態も利用者数が大きく減りました。

専門店業態を複数取り扱うフードホール業態や従来のディナータイムだけでなく、アゼリアテラスのエスプレッソDワークスのような「モーニング」「ランチ」「アイドルタイム」「ディナータイム」と、1日に4業態を展開して細かなニーズに対応できる業態が求められて、対応していきました。

澤田:
アゼリアテラスのオフィスフロアにも影響があったんですか?

稲葉:
ありましたね。新築だから周辺に比べて家賃は高いし、コロナ禍でどの企業様も業績が苦しくなっていたから、オフィスに投資するような状況ではなくなったのです。

澤田:
コロナ禍でいうと、都心にある企業が郊外に移転する機運が高まっていたと思いますが、そういった問い合わせはどうでしたか?

稲葉:
結論から言うとありませんでした。というのは流山だと、そこまで郊外という立地ではなかったのでしょう。秋葉原からつくばエクスプレスで1本、快速なら30分かからない立地が近すぎたんだと思います。同じつくばエクスプレス沿線でも、終点のつくば駅周辺のオフィスはコロナ禍ですぐに埋まったそうです。人口密集地の都心からの距離感と家賃相場の兼ね合いで、流山を新たな入居先として検討する企業様はいなかったんだと思います。

澤田:
少し前からオフィスフロアは埋まってきましたが、それはどういう理由なんでしょう?

稲葉:
市外や県外からの移転ではなく、業績が回復してきた地元の企業様が入居してくださっています。もともと流山おおたかの森駅周辺の街づくりに対して、人の流入という面では地元企業様も高く評価してくださっていて、開発が進むたびに集客力も高まっていったから人気もあったわけです。なんといってもアゼリアテラスは駅徒歩1分ですから。業績が回復してきた地元企業様が、拡大移転ということで入居してくださっています。

吉田:
それらのきっかけにも、こかげテラスの開業が大きかったと言えます。とはいえ、つくばエクスプレスが保有している場所なので、安全面などさまざまな観点で提案や議論を重ねていきました。はじめに着工・完成した本館以降の一連の街づくり開発を通じて、少しずつ行き交う人が増えて街が発展していったプロセスも評価していただき、最終的に承認されたわけですが、こかげテラスは最初の提案から完成まで実に7年もの月日が流れました。

小見山:
本館とANNEX1を空中で結ぶ連絡通路も、なかなか大変だったとお聞きしました。

吉田:
あの通路は道路の上を通す関係で、流山市だけでなく千葉県とも協議が必要でした。届け出をしたらハイ承認…という簡単な話ではなく、計画説明と協議を何度も行いました。連絡通路がある場合とない場合で、人の動きや車も含めた交通安全・渋滞問題・利便性など、様々な観点から想定される効果もお伝えし、粘り強く対話を重ねたことで実現できたと思っています。

大変な仕事をやり遂げられた理由

小見山:
現場の観点で言うと1つひとつの物件に向き合い続けてきたという感覚です。どの物件でも当然ですが、着工前はCADで描かれた図面やCGの完成予想図しかありません。それから現場に足場が組まれて、搬入された鉄骨が組まれて…と少しずつ目に見える形で工事が進んでいきます。日々の変化を目の当たりにできるから、やりがいやモチベーションが途切れないというのはあると思います。

開発計画全体の中の1物件が、完成したら街の中でどう機能するか?それを想像しながら取り組めることも大きなポイントです。たとえばFLAPS。建設途中のテラスに出て、広場を中心とした全景を、見渡したとき「これが完成したら今まで以上に訪れる人たちの憩いの場となり賑わいが出る駅前空間が完成する」と実感しました。ですから細部まで気を抜くことなく、こだわり抜いて進めることができたのです。

澤田:
建物の建設がハードだとしたら、私は警備体制や館内放送・顧客サービスなどソフト側を担当していましたが、基本的に小見山さんと同じ感覚で仕事に向き合えていますね。完成までのリードタイムは長いものの、1つの施設が完成するまでには本当にたくさんのやるべきことがあります。それら1つひとつをどうするか、自分で決めて仕事を動かしていけるのが大きなモチベーションです。

「自分で決める」という部分も、たとえば20代の若手社員でも「こうした方が良いと思います」という意見やアイデアを発信しやすいし、それが受け入れられる風土でもあります。もちろん振り出したすべてが認められるわけではありませんが、「考えて・行動する」の繰り返しに仕事の手応えを実感できます。今では自分だけでなく、まわりのメンバーとも役割分担をすることで、より広い視野で仕事ができるようになったと思っています。

吉田:
自分が担当する業務が、街づくりや地域の活性化に直結していると思えるのは、年齢や年次に関係なく当社で働く大きなやりがいだと言えるでしょう。

澤田:
私が流山に着任したときは、どういった施設を開発していくのかという「つくる」フェーズの議論は進んでいる一方で、完成した建物や空間をどう活用していくかという「育てる」フェーズの議論については、明確な結論が出ていない段階でした。そこで地域の住民の方々とも一緒に、街の文化を育てていく取り組みを社内で企画提案しました。

具体的には「グラフィックアワード」という企画で、地域の住民や全国のアーティストに呼びかけて、流山をテーマとしたイラストの募集・展示を行いました。

また、住民投票により選ばれた優秀作品をフロアマップや館内装飾等に展開することで、施設と地域の共同で新しい文化を形にしていくのが狙いです。結果として多くの作品が集まりましたし、地元の方々に街づくりへ参加するおもしろさをお伝えできたり、市外・県外のアーティストに流山を認知していただくことにもつながりました。

吉田:
年に1度の新事業提案制度に提出したんでしたね。

澤田:
そうです。建物や設備だけでなく、それらの活用方法まで全てをデベロッパーである我々が用意するのではなく、地域と一緒に地域の新しいカルチャーを創ることができれば、今後の施設の有効活用や先々の街づくりにも役に立つのではないかと考えました。

小見山:
企画提案は誰でもできるものの、必ずどれかが採用されるというわけではありません。そんな中で、この企画が承認されて実現できたのは素晴らしいことだと思います。私も新事業というわけではありませんが、デジタルサイネージに表示させる内容を差し替えたり、修正する際は業者に依頼していた業務を、内製化してスピーディに更新できるようにしました。

きっかけは自分の業務効率を改善したかったわけですが、それが実現できたのは嬉しかったですね。

澤田:
業務効率の改善につながるアイデアというのは、各現場にいなければなかなか出せるものではありませんよね。

吉田:
考えてみれば、商業施設の開発を行うデベロッパーではあるものの、開発だけでなくその後の運営や宣伝、リーシングなどトータルに対応できることが当社の特徴なのかもしれません。開発なら開発、運営なら運営と、特定の役割に特化しているデベロッパーは多いものの、すべてに対応できるデベロッパーというのは業界でも稀だと思いますよ。

今後の流山おおたかの森S・Cについて

吉田:
街づくり型デベロッパーとして、運営をしながら継続的な面開発の検討をしていきますが、ハード面での開発計画は区切りとなったので、直近の取り組みとしては、完成したハードをどう活用していくかというソフト面の充実を図ることでしょう。

今はDEWKs(共働きの子育て世帯)の流入で人口が増えていますが、その世帯の子どもたちが成長し、いずれ社会人として巣立って行ったらSCや街づくりが廃れてしまう…。そんなことにならないよう、先々まで街が成長していくために必要なことを継続して考えていかなければなりません。

小見山:
その一環としてコミュニティ戦略部という部署が立ち上がりましたね。SCがモノを買うだけの場所ではなく、地域とどう連動していけるかを考えて実践する部署だと聞いています。地域内外にファンを増やしていく観点で、流山なら流山の特徴やビジョンを把握してその街独自の打ち手を展開していくそうです。まさにこれからやっていくべき部分だと思います。

稲葉:
流山には「ママズカフェ」(「流山おおたかの森LOOP」に6月から名称変更予定)というコミュニティイベントがあります。ファッションや食・子育てなどに関連するワンデー講座を体験して、周囲におすすめしてもらうという仕組みです。(関連ページ

今は流山の人口も増加傾向ですが、2027年には落ち着く見通しです。それまでにより一層地域に貢献できる取り組みを展開していく必要があると思っています。 有形無形いろいろと考えられるものの、大切なのはコンパクトでクオリティが高い内容にするということ。少しずつでもそういった取り組みが増えていけば、流山エリアのブランディング向上にもつながっていくはずです。

澤田:
周辺地域でスモールビジネスを始めた方々とのつながりを考えたり、コラボするような取り組みも増やしていくべきだと思います。というのも、新たに流山に移住してくる方々は、自ら選択して流山で暮らしていて、地域への期待や特別な想いを持った方も多くいらっしゃいます。新たに始まった地域のスモールビジネスと、新たに加わった住民の皆さまを結ぶプラットフォームのような機能を、SCは担っていくべきです。

稲葉:
行政や地域の方々もそういった面に積極的で、社会人サッカークラブが立ち上がったり、スポーツ施設がリニューアルされたりしています。単に人口が増えているだけでなく、新たなコミュニティや取り組みが生まれたり、それらが連動するシーンも増えています。

澤田:
流山は、全国の市で6年連続人口増加率1位という実績もあって、全国の自治体からもPPP(Public Private Partnership)という官民連携のまちづくりの成功事例として注目されています。これからも街づくりに貢献していくのはもちろんですが、第二・第三の流山を創り出すことも視野に入れて、具体的な検討も始まっています。

吉田:
街づくりや地域振興に直接的に関われるのが大きなやりがいですが、それを応用・発展して別の街づくりにも役立てられるのも、デベロッパーならではの大きなやりがいだと言えるでしょう。

私たちとともに、未来を想像し、
挑戦を続けることができる多くの方と出会えることを期待しています。

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